余裕のある暮らし方と年収は比例するのか?

金銭感覚はひとそれぞれですが生まれ育った家庭環境が大きく

関わってくるというお話をいつもしています。

そして、金銭感覚が人それぞれ違うのと同様に、

お金に対する満足度も人それぞれ違います

皆さんはどのくらいの収入があれば余裕を持った暮らしが送れると思いますか?

これは私が実際に家計コンサルをしたご夫婦の話です。

初めに相談を受けたとき、ご主人様32歳、奥様31歳でした。

年収はご主人様約500万円、奥様はお子様の出産を機に勤めていた

法律事務所を退職され、専業主婦でいらっしゃいました。

相談内容は貯蓄ができていないので、何とか家計改善をしたいとのことでした。

そこでまず家計の仕分けをしていきました。

住宅費、食費、水光熱、携帯電話、日用品、お小遣いなど細かく聞いていったところ、

突出して大きな支出費目はなかったのですが、年に数回大きな支出があり、

それらが貯蓄できない原因となっていました。

お子様が生まれたばかりの時期で支出がかさむのは仕方ありませんが、

私の経験上、0歳から小学校に上がるまでの子供用品は短期間しか使わないものが

ほとんどだったように思います。

そこでレンタルシェアの仕組みを利用することなどを伝え、

まずは大きな支出を可能な限りおさえていきましょうとアドバイスしました。

その後2回、お時間をいただき、家計改善アドバイスをおこないました。

そして、その5年後、再度お客様より連絡がありました。

5年前よりももう少し深刻度が増したと感じられる内容のメールでしたので、

不安を覚えながら再訪問しました。

お子様がもう一人お生まれになり、4人家族になられていました。

戸建て住宅を購入されたので新居を訪問したのですが、

立地、外観ともに素晴らしいお家であり、ガレージにはまたこれも素敵な

高級車が停まっていました。

お二人に会う前に何となく、前回以上になかなか大変な家計費

が見えてくるようでした。

そして、さらにお話を詳しく聞いて驚くこととなります。

まず、世帯年収が大きく変わっていました。

ご主人様650万、奥様は法律事務所に復帰されフルタイム勤務で

年収600万とのことです。

お二人で1250万円ですから世帯収入は2倍以上になりました。

ですが、今回の相談内容も『貯蓄ができない』ということであり、

実際の貯蓄残高も5年前からほとんど増えていません。

あらためて、家計費の仕分けをしていきます。

前回と比べて大きく増えた費目は、住宅費と教育費、車関係費でした。

特に住宅費や教育費はなかなか変えることができない固定費ですから、

これらが大きいと家計に大きな影響を及ぼします。

ところが住宅費は頭金をほぼ入れずに、お二人でそれぞれ大きな住宅ローンを

組んでいました。

さらに教育費では上のお子様はインターナショナルスクールに、

下のお子様はインターナショナルスクール入学を見据えたプリスクールへ

通わせておられたので、この二つの費目だけで月額換算で40万円です。

車はこの5年の間に2回買い替えたそうです。

また、奥様のフルタイム勤務によって、定期的な家事代行サービスの利用に加え、

外食の回数も増えていました。

さらに年に1、2回の国内旅行、年に一回は海外旅行に行くのが

ご家族の楽しみのようです。

そして、前回とはちがうことがもう一つありました。

それはお二人とも支出に関してほとんど把握ができておらず、

そのため、使途不明金額が異常に多いことでした。

ここまでくるともう家計の仕分け、費目見直しのアドバイスだけでは

改善できません

FPとして合理的計画をいくら示したところで、改善に向けた

気持ちのベクトルは、一度は傾くものの長続きさせることは

非常に厳しくなります。

ここからはお二人のお金に対する考えから紐解いていくことからスタートです。

いろいろお話を聞いてわかったことがあります。

まず、奥様は専業主婦だった時には自分が思い描く生活ができず

ストレスばかり溜まり、早く復職したい思いが常にあったこと。

また教育費に関しては、お金がかかったとしても自分たちが親にしてもらっていたように

良い教育を受けさせてあげることを当たり前のように思ったとのこと。

住居は予算をかなりオーバーしてしまったが、駅から近く、毎日のことを考えると

この選択は間違っていないと思ったし、ダブルインカムであれば大丈夫だと即決

したそうです。

そして、私が一番印象に残った奥様の一言があります。

それは今の収入であっても『全然暮らしに余裕がない』でした。

復職後、初めのうちは貯蓄も少しずつでき、気持ちにも余裕があったそうです。

ただ、そのうちお金がかかるすべてのことに『仕方ない』『このくらい大丈夫』

という気持ちで自分自身を納得させ、どんどん支出が嵩んでいったそうです。

今回ここからはゆっくり時間をかけ家計改善プログラムを

おこなっていくこととなりました。

このご夫婦のように年収があがったとしても

お金にも心も余裕を持てない人がいます。

逆に世帯年収は高くはないけれども、きちんと貯蓄できていて

暮らしに余裕がある世帯もあります。

今回は、余裕のある暮らし方と年収は比例しない場合があるということ、

何か問題を抱えており、その原因に心理が関係する場合は、

時間をかけてゆっくり紐解いていくことの大切さを

お伝えさせていただきました。


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