性格から生まれた「採算度外視」の浪費グセ
My Career Story 2
以前のわたしには、お金があればあるだけ使ってしまう
「お金の使い方のクセ」がありました。
借金をしてまで欲しいものを買う、というところまではいきませんでしたが、
賢く貯金をしたり、お金の活用方法を考える堅実さはなかったのです。
私はそれを「普通」だと思っていました。
それが自分のクセであるなんて、思いもしなかったのです。
私は、長野県で生まれ育ちました。
父は研究職、母は公務員。いわゆるお堅い家庭です。
父は厳格な人で、「いい大学に入って、いい会社に就職する」のが
良い人生だと考えていました。
それに反発していたのが私。高校は進学校にいったものの
「いい大学、いい企業、その先に何があるの?」と思っていたので、
大学には行かず、専門学校に進学する道を選びました。
私は、ものをつくる仕事に憧れていました。
手に職をつけて、自分の手で何かを生み出すことを
やってみたかったのです。
そんな想いから、デザイン系の専門学校に進み、
アパレル系の企業に就職。「服を生み出す」という
理想の仕事に就くことができました。
ところが、就職先は、いまで言うブラック企業。寝る間もないほど
毎日働き詰めの毎日で、眠気のあまり、道ばたで倒れそうになったこともあります。
でも、そこまでして働いても、新人の私には、「自分の手で服をつくる」という
最もやりたい仕事は回ってきませんでした。
今思うと当たり前のことですが多忙がゆえ
冷静な判断ができなくなっている自分がいました。
「やりたいことを、やりたいのに…」。
そんな心理的ストレスも重なり、私は、お給料の多くを、
お気に入りの服を買うことに費やしていました。いいなと思う服を買って、
デザインアイデアの参考にしたかったのです。
そのおかげで、貯金はまったくできず。ボーナスも出たら
すぐに使い切る、という生活。
いま思うと、お金の使い方に関してまったくの無知だったと言えますが、
その頃は「こんなものだ」と思っていたのです。
やがてもっと自由な発想でものづくりをやってみたい、という衝動に駆られ、
私はウエディングドレスを作る会社に転職しました。
ここでの仕事は楽しかった。お客様の願いをかなえるために、
オーダーメイドでドレスを作っていく仕事は、
まさしくめざしていた姿でした。
そしてもっと自由に自分の服づくりをしたくて、
フリーのデザイナーへと転身しました。
ホテルにある衣装室からの依頼を受け、結婚されるお客様のために、
世界で一つだけのドレスをつくる。本当にやりがいがありました。
でも、ドレスを作っても作っても、なぜだか利益が出ない…。
実はその理由が、自分の「お金の使い方のクセ」にあったのです。
私は、良くも悪くも「職人気質」のデザイナーでした。
お客様にとって最高のものをご提供したい!と強く思うほど、
採算を度外視していたのです。
例えば「あのレースより、このレースを使ったほうが絶対にいい!」と
思うと、高価なレースであっても使ってしまう。だからといって、
お客様にその代金はご請求できず、利益を割ってしまう…。
そんなことを繰り返していました。
なぜ、採算を度外視するようなクセがあったのでしょうか。
そのことを考えると思い出すのが、父と母のことです。
父は、人のためになることなら、お金を気にせず打ち込む人でした。
詳しくは分かりませんが、善意のあまり、大きな損を出したこともありました。
母は、子どもたちを不安にさせまいと「お金の心配はしなくていい」と
いつも言っていました。
そんな両親の背中を見て育った私は、「人のためなら費用に糸目を付けない」という
考え方の持ち主になっていました。
よく言えば太っ腹。逆に言えば、先々のことを考えない浪費家です。
でも、ある日、そんな自分に気づくときがやってきました。
そのきっかけとなったのが、結婚したあとに知り合った、
あるファイナンシャルプランナーとの出会い。
この出会いが、私の人生を大きく変えることになるとは、
そのときはまったく思っていませんでした。